研究概要 |
本書では,システムソリューションの進展をソフトウェア進化の法則の視点から考察した。すなわち,ユーザー企業が,提案されたシステム・ソリューションを将来にわたって,どのように運営していくかという点を,進化論的に考察した。消費者のニーズ,為替市場,社会情勢等企業をとりまく環境の変化は不特定に変動する。すなわち,コンピュータをベースとしたシステム・ソリューション,もしくはビジネス・プロセスが有効に機能するためには,システムの開発構築のみならず,その後のシステムの展開,軌道修正にもそれ以上の重点が置かれなければならないのである。 ここで,システム・ソリューションの変遷とは何かということを,ロンドン大学(Imperial College of Science, Technology and Medicine)のManny Lehmanが主張するするソフトウェア進化の法則(Lehman's Law)をベースに考察してみるならば,ソリューションがコンピュータベースのシステムである限り,これをソフトウェアの変遷として捉えたときに,われわれはその変遷を最も可視的に把握できる。もちろん,単なるコンピュータの利用目的が変化したということも考え得ることではあるが,新規ソリューションの提供時以外は,ソリューションの変遷をソフトウェア進化のプロセスを示すフィードバック・ループといい換えることができるのである。 管理会計的視点に立てば,その際に免じる,開発費やメンテナンスコストをいかに管理するかということが焦点となる。企業における実態調査の結果を分析参照し,本書において,コスト予測と管理に関するモデルを提示した。また,本結果は,ライフサイクルコスティングや原価企画の理論と結合し,管理会計と情報処理との学際的領域に成長するものと考えられる。本年5月に,情報処理学会にて,この可能性を報告する予定である。
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