本年度は、フィデュシャリー・アカウンティングの研究の枠組みを構築するために、従来の研究を著書『労働債務の会計』(白桃書房、2001年11月)として著した。そこでは、とくに従業員と事業主との間の労働の提供をめぐる給付に係る事業主の負う債務を「労働債務」概念としてとらえて、それをもとに国内外の労働債務の会計の理論、制度について検討した。 さらに、研究テーマに対して必ずしも真正面からではないが、接近のための試論として「フィデュシャリー・キャピタリズム」について、『月刊IPERI』(国際年金経済研究所)においてそれがどのような概念であり、なぜ重要であるかについて、その概要について明らかにしている。また、労働研究機構の国際向けブリティン"Japan Labor Bulletin"においては、わが国の退職給付会計基準が日本企業の退職給付制度にどのような影響をおよぼしているのかについて、多角的に検討した。 本年における以上の成果は、本研究の出発をなすものではあるが、これをもとに予定されている次年度の研究に結びつけたいと考えている。
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