江戸時代における三井家の家政と事業経営全体とを統轄する中央機関であった「大元方」ついて、3ヵ年で同機関が存在した1710年上期から1892年下記までの経営分析、および財務内容の変化と会計政策の変更との関連性を探求する計画であるが、初年度の平成13年度は、1710年上期から、三井家「大元方」制度が一旦解体する直前の1774年下期までの65年間の経営分析を試みた。 まず、大元方の決算報告書である「大元方勘定目録」の主要財務データを、史料が現存しない1714年下期、1721年上期、1741年上期、同年下期、1762年上期および1763年下期を除き、124期分のすべてについて表計算ソフトに入力し、次に、その入力データを用いて、財務数値の分析を行なった。その結果、大元方の主たる収益源が、呉服店から両替店にシフトしていくとともに、呉服業の収益性が長期持続的に低落傾向を示し、金融業の収益性も18世紀後半には頭打ちになったことを具体的に解明し得た。又、大元方の不良資産比率の増大も分析した。 ただ、データ入力に時間がかかり、研究成果をまとめて、それを発表する作業は進まなかったが、その一部は裏面に記した論文で公表予定である。
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