格子頂点作用素代数の中で、互いに直交する共形元から生成されるヴィラソロ頂点作用素代数のテンソル積に同型な部分代数を考える。格子頂点作用素代数を、この部分代数の既約加群の直和に分解することにより、頂点作用素代数の構造に関する知見を得ることを目標に研究した。既約加群は、この部分代数の加群として最高ウエイトベクトルにより生成されるので、格子頂点作用素代数に含まれる最高ウエイトベクトルを決定することに、問題は帰着する。格子としては、A型、D型、およびE型のルート格子を√2倍したものを扱う。平成13年度に得られた研究成果は以下のとおりである。 1.格子が√2A_1型の場合に、ウエイトが2以下の最高ウエイトベクトルをすべて決定した。 2.格子が√2D_1型の場合、互いに直交する共形元の選び方は2通りある。このうちの一方については、最高ウエイトベクトルをすべて決定した。もう一方の選び方に対しては、ウエイトが2以下の最高ウエイト決定するにとどまっている。 3.格子√2A_3型の場合、最高ウエイトベクトルはすでに決定されているが、それをもとに整数環の8を法とする剰余環上の符号に対応して新しいタイプの頂点作用素代数を構成した。 4.格子が√2A_3型の場合の研究をもとにして、ムーンシャイン頂点作用素代数をある部分代数の既約加群の直和に分解することに成功した。 平成14年度には、位数3の自己同型によるオービフォールドについても研究に着手し、次の成果が得られた。 5.格子が√2A_2型の格子頂点作用素代数の位数3のオービフォルドの部分代数として、中心電荷が6/5のW_3代数を発見した。
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