切断を有する3次元楕円Calabi-Yau多様体を複素構造の変形を調節して特異点を持たせたWeierstrass模型を特異点解消することによって実現した場合には半単純Lie環とその幾つかの表現を自然に対応させられる可能性があることが知られている。これは弦理論の立場からはこのようなCalabi-Yau多様体にF理論をcompact化するときの6次元理論のゲージ対称性とmatter contentに対応している。特にHirzebruch曲面を底空間とするこのような3次元楕円Calabi-Yau多様体の場合にはperturbativeなheterotic stringをK3曲面上にその上の安定ベクトル束をうまく選んで"compact化"した理論と双対であることが予想されている。この様な弦双対性予想を手掛かりに、当研究者の以前の仕事でこの様なCalabi-Yau多様体のGromov-Witten不変量と密接に関係していると目されていたWeyl不変かつ殆んど正則なJacobi形式を決定することを研究課題としてきた。これに関しては(予想を具体化するという意味においては)ほぼ満足すべき結果が得られ、また楕円コホモロジーとの関係も明らかに成りつつある。しかしながら得られた結果に対する解釈、特に双対性の因って来る所を大局的に理解するという点に対しては未だつめるべき点が多い。出来るだけ早い機会に成果を発表できるよう努力している。
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