1変数のモジュラー形式から2次のジーゲル・モジュラー形式への持ち上げは1970年代の後半に、齋藤・黒川によって独立に予想され、1980年頃にマース、アンドリアノフ、アイヒラー、ザギエ、ピアテツキー=シャピロらによって証明された。この持ち上げは今日では齋藤・黒川リフティングと呼ばれている。 1990年代の後半、伊吹山とデューク・イマモグルによって独立に齋藤・黒川リフティングの高次のジーゲル・モジュラー形式への拡張が存在するという予想が提出された。最近、筆者はこの予想を証明し、持ち上げられたジーゲル・モジュラー形式のフーリエ係数を表す簡単な公式を得た。また、持ち上げられたジーゲル・モジュラー形式の標準的L関数も具体的に与える公式を得た。この結果に関してはすでに論文にまとめて発表した。 また、この新しいジーゲル・モジュラー形式を核関数にして、高次のジーゲル・モジュラー形式の間の持ち上げを構成することができる。この持ち上げは特別な場合には、宮脇によって予想されたジーゲル・モジュラー形式の持ち上げに関する予想の部分的解決になっている。この場合には持ち上げられるジーゲル・モジュラー形式がいつ自明になるかを決定することはできなかったが、自明でない持ち上げが得られる場合にはその標準的L関数を計算することができる。また、実際にこの持ち上げが自明でないような実例を多数与えることもできる。この結果については現在論文を準備中である。 これらの業績に対し、筆者は2001年度の代数学賞を日本数学界より受賞した。
|