研究概要 |
量子アファイン展開環の有限次元表現について,箙多様体の同変K群を用いて研究代表者が構成した標準加群が,柏原の導入したextremalウェイト加群と同型であることを証明した.extremalウェイト加群は,結晶基底を持つことが柏原により示されているが,それが自然な内積に関して'ほとんど'直交していることを証明した.この結果は,Beckとの共同研究により,一般のアファイン・リー環に拡張された.この応用として量子アファイン展開環の両側セルに関するLusztigの予想の証明を与えた.(論文投稿中) また研究代表者が箙多様体を用いて導入したq指標のt類似についての研究をさらに進め,A型,D型のときにYoung図式による表示式を与え,またqが1のべき根のときにも拡張した.Kirillov-Reshetkhin加群と呼ばれる特別なクラスの有限次元既約表現について,そのq指標の満たすT-systemという漸化式を証明した.(論文投稿中) また,量子アファイン展開環の有限次元表現のq指標を計算するアルゴリズムをC言語でプログラムとして記述し,スーパーコンピュータでの計算を実行した.これは平成13年度から始めて,平成14年度には大規模なプログラムの改良を行い,E_8型の場合を除いて計算を完了した.また,E_8型の場合にも十分なメモリ(数十ギガバイト)と計算時間(一週間程度)があれば計算が可能であることを確認したが,予算の不足により実際に実行することはできなかった. またK3曲面の上のベクトル束のモジュライ空間のコホモロジー群に例外ベクトル束が定める作用素について研究した.これは箙多様体からアファイン展開環の表現を作る構成法で,K群の代わりにコホモロジー群で実行したものの類似である.
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