研究概要 |
射影空間P^n(n【greater than or equal】4)上の階数2のベクトル束Eに関する次の分解問題を研究した。 (1)n=4.c^2_1-4c_2【greater than or equal】0ならば、Eは線束の直和である。ただし、c_i(i=1,2)はEのi次Chern classである。 (2)n=5.Eが安定ベクトル束でないならば、Eは線束の直和である。 本研究においては、平成13年度の研究成果であるベクトル束の分解定理および正標数の体上の小平消滅定理を用いて、上記分解問題を正標数の体上で取り扱い、次の研究成果を得た。 1)n=4.EのChern classesがc_1=α+β,c_2=α・β(α,β∈N,α【greater than or equal】β)と表されるとき、Eはtopologically trivialなベクトル束と云われる。このとき、c^2_1-4c_2=(α-β)^2【greater than or equal】0である。 定理:β【less than or equal】2である非常に豊富なtopologically trivialなベクトル束は線束の直和である。しかし、一般のβに対しては、未解決である。 2)n=5.XをEに付随する行列式3次元多様体とする。Eが線束に分解するためのXの幾何学的特徴付けである次の命題を得た。DをEのtautological divisorのXへの制限因子、HをP^5の超平面因子のXへの制限因子とする。このとき、自然数aをH^0(E(-a))≠0を満たす最大の自然数とし、H^0(E(-a))の零でない切断に付随するXの曲面をZ=D-aH(ZはEに対して一意的に定まるXの曲面である)、更にZ^*=D-(c_1-a)Hとする。 定理:次の命題は互いに同値である。 (1)Eは線束の直和である。 (2)XにはZと交わらない曲面が存在する。 (3)N=Z^*-bZはXの数値的に正な因子である。但し、b=(ZZ^*H)/Z^2Hである。
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