研究概要 |
平成14年度は13年度以前の科研費研究の成果をふまえ、素数次巡回拡大の整数環の構造について岩澤理論的立場で研究を行った。主な成果は、特殊な設定の下ではあるが、整数環の構造を、これまでそれと無関係と思われていた。P進L関数が生々しく支配している事実の発現である。 Pを奇素数、Kを1のP乗根を含む虚アーベル体、K∞/Kを円分Z_p拡大、K_nをそのn番目の中間体とする。S_nを最大実部分隊K^+_nの整数aで、pで主単数となりaが生成する単項イデアルがsquase freeなものとする。T_nをa∈S_nでK_n(a^<1/P>)/K_nの分岐がtameなもの全体、N_nをa∈S_nでK_n(a^<1/P>)/K_nが相対正規整数底を持つもの全体とする。Nultherにより、N_nを⊆T_nである。m>nに対して、自然な写像K_n→K_mのもとで、T_n⊆T_m, N_n⊆N_mとなる。T_n内でN_nがどのくらい大きいか、小さいかという問は古典的な問題意識である。一歩進んで、m⊇nに対して、T_n内でT_n∩N_mがどのくらい大きいか、小さいかを考えた。これは整数環についての"単項化"の問題である。得られた成果は、差T_n\(T_n∩N_m)がP進L関数に対応する岩澤多項式から出発して、m-nについて"帰納的"に記述できるという事である。特に、nが"大きい"時、T_n∩N_m⊆N_nなる事、nが"小さい"時には、T_n⊆N_<n+1>,N_<n+2>,等になる事があり得る事を示した。
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