研究概要 |
今年度は、円分岩澤理論と整数環の構造との関わりを更に深く調べるための基礎となる研究を行った。主要な成果を2つ述べる。 1.正規整数底(NIB)のGalois descentの問題 pを奇素数,Fを1のp乗根Spを含まない代数体,K=F(Sp)とする。p次不分岐巡回拡大N/Fに対して、N/FがNIBを持つ事とNK/KがNIBを持つ事が同値な事を示した。p=3,Fが虚2次体の場合は既にBrinkhuisによって知られていたが、それを大幅に一般化したものである。応用として次を示した。KをSp∈Kなる代数体とすると、p次不分岐巡回拡大L/KがNIBを持てば整巾基底を持つ事がChildsによって知られている。上のdescent ropertyを用いて、Sp【not a member of】Kの時にはこの事は不成立なる事を示した。 2.Gomez Ayalaの定理の一般化 pを素数,KをSp∈Kなる代数体とする。Gomez AyalaはK上のtameなp次巡回拡大がNIBを持つための必要条件をKummer generatorの言葉で記述した。これは、素数次Kummer拡大の整数環を調べる上で基本的な結果である。これを一般のcyclieなKummer拡大に対して拡張した。応用として、任意の代数体F,m【greater than or equal】2に対して、Fの有限次拡大H/Fが存在し、F上のすべてのexponent mのabel拡大Nに対してNH/HはNIBを持つ事を示した。これは、整数環についての一種の"単項化"定理である。
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