研究概要 |
1.セルバーグ型ゼータ関数の非自明零点の分布、すなわちラプラシアンの固有値分布は、少なくとも数論的多様体に対してはランダムであろうと予想されており、この予想は素測地線定理の究極的な改善と同値であることが知られている.本研究では3次元数論的多様体に対し、保型L関数のリンデレーフ仮説の下で素測地線定理を改善した.改善された指数は11/7であり、従来の2より3/7の改善を得た. 2.ゼータ関数の自明零点はガンマ因子によって定まる.セルバーグ・ゼータ関数のガンマ因子は、2,3次元の双曲多様体に対してのみ知られていたが、本研究では一般の階数1リー群の、商体積が有限な離散部分群についてガンマ因子を求めた.それらは多重ガンマ関数を用いて完全に表された. 3.ゼータ関数は臨界領域において、変数の虚部を無限大にしていくと任意の関数を十分良く近似できることが知られている.この性質はゼータ関数の普遍性と呼ばれる.最近では変数の虚部を固定して他のパラメータを無限大にすることによる普遍性が発見されている.本研究では、量指標のヘッケL関数について、量指標を与えられた生成元のべき積で表し、その指数のなすベクトルの絶対値を増大させることによる普遍性を扱った.これはゼータ関数研究においてこれまでに研究されたことのなかった観点であり、今後のゼータ関数の評価などの問題にも新たな視点を与える発想であると考える.本研究では変数の虚部と量指標をともに動かした場合の普遍性を証明した.
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