過去の数学の歴史の中で、リーマン予想の類似問題が解決された例を見ると、ドリーニュによるヴェイユ予想の証明や、ルオ、ルドニック、サルナック、キムらによるラマヌジャン予想への進展の証明があげられるが、それらの証明からわかることは、ゼータ関数の零点の和を零点に持つようなゼータ関数(多重ゼータ関数)を構成し応用することが重要だということである。本研究はこの多重ゼータ関数を、本来のリーマン・ゼータ関数に対して構成することを目的とした。 研究の方法は、まず二重明示公式を書き下すことにより、ゼータ関数の非自明零点の組合せに渡る和と、素数の組に渡る和との関係式を導いた。これは、従来から知られていたリーマン・ゼータ関数の明示公式の二重化であるが、全ての非自明零点の組合せを取ると発散和が出てしまい意味をなさないため、上半平面あるいは下半平面に属する非自明零点同士の和だけを考えたところが新しい着想である。さて、従来、明示公式はゼータ関数のオイラー積表示から得られ、逆に、明示公式を特殊な試験関数に限定することでゼータ関数のオイラー積表示を復元できた。この原理を二重明示公式に適用し、我々は二重明示公式から二重リーマン・ゼータ関数の具体的な形(素数の組に渡るオイラー積表示)を得た。 主定理として、そこで得た二重リーマン・ゼータ関数が実部が2より大の領域で絶対収束し、実部が正の領域に解析接続され、2と2-sとの間で関数等式を満たすことを得た。
|