多変数保型形式の典型的な例であるSiegel modular形式、Hilbert modular形式やHermite modular形式については近年その発展がめざましい。これについては、古典的な楕円モジュラー形式の単なる拡張としてではなく、2次形式論(Siegel modular形式に関連)や代数幾何(Hilbert modular曲面の理論に関連)への応用をめざし、古くはHilbertやSiegelによって研究の出発点が明らかにされた。我々の研究目標は多変数のmodular形式が持つ豊富な整数論的な性質を明らかにすることである。具体的に述べれば (1)Siegel-Eisenstein級数のp-進的な性質を明らかにする。 (2)標数pのmodular形式の性質を調べる。 (3)modualr形式のなすgraded ringの構造を調べる。 (4)Hermite modular形式の新たなliftingの研究。 等が挙げられる。上記項目について、この研究期間において得られた結果は次の通りである。 (1)Serreが楕円modualr形式の場合に得た結果をSiegel modular形式の場合に拡張することができた。 (2)Hilbert modular形式の場合に標数pのmodular形式のなす環の例を構成することができた。 (3)ある虚2次体上のHermite modular形式のなす環の構造を調べた。 (4)所謂、池田liftingとよばれるliftingの例をHermite modular形式の場合に構成できた。 以上がこの研究期間に得られた結果であるが、特に(3)は海外共同研究者Krieg氏との共同研究で得られた成果である。
|