研究概要 |
まず井草の研究を調べたが、新しい知見はまだ得られていない。保型形式の次数付き環A(Γ_n(1))から射影不変式の次数付き環S(2n+2)へのいわゆる井草の順同型ρは、種数がnの超楕円曲線のモジュライ空間を主偏極アーベル多様体のモジュライ空間A_gへ埋め込むことの代数的表現であるが、この写像をより精密に調べていきたい。次に種数3の場合を検討した。露峰教授の調べた保型形式の次数付き環A(Γ_3(1))と対応する3変数4次同次式の射影不変式の次数付き環S(3,4)を調べ、両者の間の関係を調べているが、実質的進展は、まだない。また、種数1の場合(楕円曲線)のj関数のような関数で数論的にも面白い関数は、まだ見つけることができていない。引き続き具体的にしらべていく。 モジュライ空間の研究の一環としてn点付きアーベル的共形場理論を考えており、そこでアーベル的共形場のコンフォーマルブロックの空間の定義を二つの条件で与えて構成しようとした。その研究において、3点付き1次元複素射影空間のコンフォーマルプロックの次元が1次元あることを示せば、理論がうまくいくはずであったが、それがどうしてもうまくいかなかった。研究の結果、コンフォーマルブロックの定義の条件式はそのうちのひとつの式だけにしたほうが良いと思われ、現在は、その方向でアーベル的共形場理論を再構成中である。また、その研究の中で、フェルミオン演算子を無限変数多項式環に作用する微分演算子としてSchur多項式を利用して具体的に構成することができるが、その直接証明を与えた。(鶴岡工業高専研究紀要36(2001),41-46)これをさらに発展させて無限変数多項式環上での微分作用素による表現論的に興味深い公式を見つけていきたい。
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