一般のアーベル群Gにおいて、部分群Aを含む極小な純粋部分群が存在するとき、部分群Aは純粋包をもつという。一般的には、任意の部分群は必ずしも純粋包をもたない。そこで、「いかなる部分群Aが群Gの中で純粋包をもつか」という問題が提起される。本研究の出発点はこの問題にある。本研究では部分群Aをトーションフリーに限定して考察した。その結果次のような成果を得た。 (1)部分群Aがトーションフリーでランクが有限のとき、純粋包をもつための必要十分条件を得る。 (2)部分群Aがトーションフリーで純粋包をもつとき、Aのすべての純粋包は同型であることを証明。 上記(1)の結果はアーベル群の分解問題に適用できる。分解問題とは、「一般のアーベル群が最大トーション部分群とトーションフリー部分群の直和に分解するのはいかなるときか」という問題である。この分解問題に対して、「群Gがトーションフリーランク有限のとき、群Gが分解するための必要十分条件」を得た。 準純粋包をもつ部分群に対しても、「いかなる部分群Aが群Gの中で準純粋包をもつか」という問題が提起でき、この問題に対して、「部分群Aがトーションフリーランク1のとき、準純粋包をもつための必要十分条件」を得た。この結果は、群Gにおけるストレイトな元の高度行列を求めることに利用できる。例えば、「可算なトーションフリーランク1の群は、その最大トーション部分群と位数無限な元の高度行列で決まる」という事実はよく知られている。 準純粋包をもつ部分群については、最大準純粋包が存在するので、最大トーション部分群がトーションコンプリートである群、たとえば、巡回p群の直積、の分類、あるいはADE分解に利用できないだろうか、という今後の課題を得た。
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