貼り合わせリーマン多様体の研究の出発点となった平面凸ビリヤード問題に対して、コンピュータシュミレーションを行った。特に、円、楕円、次数n(>2)の楕円(楕円の方程式で指数2をnに変えた方程式で表される曲線)に対して、平面凸ビリヤード台としての平面凸曲線が置かれている面で、ビリヤードボールがどのように動き回るかコンピュータによる図示をし、また、その軌道をフェーズ空間、及び、コンフィギュレーション空間で表現した。その結果、円や楕円に対して知られている結果の確認と新しいいくつかの現象を発見した。円や楕円のビリヤードにおいては、コウスチックによるビリヤード台の層化、ビリヤードボールマップ不変閉曲線によるフェーズ空間の層化、及び、平行線軌道によるコンフィギュレーション空間の層化という積分可能性を見ることができた。 次数n(>2)の楕円においては、短軸の近傍の外部を出発点とする軌道に対して、ビリヤード台のどの点の近くも通る軌道の存在の可能性、フェーズ空間では、短軸を往復する軌道の近傍の外部では、どの点の近くも通る軌道の存在の可能性が見出された。一方、短軸を往復する軌道の近傍の内部を出発点とする軌道に対して、ビリヤード台では、コウスチックの存在、フェーズ空間では、短軸を往復する軌道のある近傍の内部は、ビリヤードボールマップ不変閉曲線による層化、コンフィギュレーション空間では、短軸を往復する軌道のある近傍の内部は、平行線軌道による層化が起こる可能性のあることが予想される。 理論的な成果としては、コンフィギュレーション空間の有理勾配を持つビリヤード軌道において、平行線の公理の成立と周期軌道の存在とが密接な関係がある事がわかった。
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