研究概要 |
今年度も昨年度に引き続き、曲率の微分方程式の研究をおこなった。特に今年度は、最終的に微分方程式を具体的に求める際に必要となる表現論におけるplethysmの分解公式に関する研究をおこなった。 plethysmとは一般線形群の既約表現の一種の合成積であり、その分解公式を具体的に求めることは表現論・不変式論における重要な未解決問題の一つである。今年度の研究においては、その中で{m}x{3},{m}x{21},{m}x{1^3},{AB}x{2},{AB}x{1^2}という形のものに限定して今までに知られていた非常に複雑な分解公式を簡略化することに成功した。例えばplethysm{AB}x{2}の場合、この分解に表れる既約成分は6つの基本的な分割の一次結合として表される。この公式を用いると{AB}x{2}に表れる既約成分の個数をA, Bの4次の多項式として表すことが可能となる。また分解公式を母関数の形に書き直すこともでき、それの特別な場合として既約成分の個数を係数としてもつ母関数も非常に単純な形の式として得られる。このような結果をLittlewood-Richardsonの公式だけから得るのは困難なことと思われる。さらにこの分解公式を用いると、分割{AB}に対応する一般線形群GL(N, C)の既約多項式表現空間が2次の不変式を持つための必要十分条件がA, Bについての条件として簡単に表現される。またこれは未証明の予想式の段階のものではあるが、plethysm {m}x{4}およびテンソル積{ABC}^2についても、同様の母関数による分解公式が計算機による膨大なデータをもとにして得られた。これらの「公式」を証明することは、今後の重要な課題である。
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