再結晶過程とは多結晶性の材料が経時的にそのグレイン構造を変化させてゆく過程である。このような構造変化は材料強度などの物性に大きな影響を及ぼすために、この過程を理解しさらにコントロールすることは物質科学におけるきわめて重要な問題である。またこの問題は数学的にも従来の結晶成長の問題などとは異なる、新しいタイプの自由境界問題を提供する。 小林とWarrenが開発してきた結晶粒と粒界の運動を記述するη-θモデルでは、粒界エネルギーが等方的なものに限られていた(すなわち粒界エネルギーが、それをはさむ2つの結晶粒の角度差のみの関数となっている)が、実際には粒界の方位と両側の結晶粒の方位の関係に対する依存性がある。我々はこの依存性をη-θモデルに導入し、シミュレーションコードを開発した。 等方的な場合に限ったη-θモデルに関しては、その特異極限方程式の表す粒界の運動が平均曲率運動に他ならないことを示した。 上記のη-θモデルは完全に固体化した物質に関するモデルであるが、我々はこのモデルを液相と固相の共存状態から、凝固、粒界の形成、再結晶過程までを統一して扱うモデルとしてη-θモデルとφ-η-θモデルの2通りのモデルを提案し、そのシミュレーションコードを開発した。これらのモデルでは、液層-固相-固相のトリプルジャンクションや、粒界におけるウェッティングなども再現することができた。 2次元球晶がつくる多様なパターンと粒界の形成に関する実験を行った。
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