再結晶過程におけるグレイン構造の時間発展を記述するモデルとして、初年度までに小林と海外共同研究者であるWarrenは、η-θモデルを提案し、グレインバウンダリメルティングのない場合(ドライバウンダリ)の粒界の運動、および結晶粒の回転を同時に記述できることを示した。また、さらにφ-η-θモデルを提案することで、凝固から粒界の形成、さらにグレイン構造の発展までを再現した。 本年度は、このφ-η-θモデルをもとに簡約化を行い、2変数のみでφ-η-θモデルと同様の過程を再現できるφ-θモデルをWarrenとともに提案した。このモデルを用いグレインバウンダリメルティングが起こるための固液界面エネルギーとグレインバウンダリエネルギーの関係を導いた。 また数値シミュレーションコードに改良を加え、変数θが2π周期の値をとることからくる問題に一応の解決を与えた。このシミュレーションコードを用いてφ-θモデルをシミュレートし、粒界運動が優位な場合と回転優位な場合の大規模な計算を行った。 また、変数θが円周上に値をとる関数とみなせることと、特異拡散方程式を満たすという2つの条件を、数学的に整合的に記述するための枠組みを、儀我とともに提示した。これにより、空間3次元モデルへの拡張に向けた突破口が示された。 初年度に行ったアスコルビン酸のメタノール溶液のからの結晶化の実験に関しては、周期的なグレイン構造を生み出す振動的結晶成長のメカニズムに対する解釈を提案した。また、それをもとにモデル方程式を提案しシミュレーションを行った。
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