1 多結晶を扱えるフェーズフィールドモデルの開発 我々は従来のフェーズフィールドモデルに角度変数を導入することにより、多結晶を扱うことのできるη-θmodelとφ-η-θmodelを提案した。さらにこれらのモデルを統一したφ-θmodelを提案することにより、1.液相から多数の核生成が起こった後の凝固過程過程、2.結晶粒の成長に伴う粒界の形成、3.粒界の運動および結晶粒の回転という一連の過程を一つのモデル方程式で記述することを可能にした。このようなこととりわけ結晶粒の回転の記述が可能なモデルは世界で初めてのものであり、大きな成果をあげることができた。また、このモデルのシミュレーションコードを開発し、様々な状況におけるシミュレーションを行った。 2 特異拡散理論 上記のモデルの最も特徴的な部分である角度変数の方程式は、儀我と小林が展開してきた特異拡散理論によって正当化される。我々はこの特異拡散方程式を、円周上に値をとる関数にまで拡張し、さらにその数値計算法を提案した。 3 振動的結晶成長の研究 アスコルビン酸のメタノール溶液は、蒸発によって結晶化を起こす際に、湿度等の条件の変化に応じて多様なパターンを形成する。その中でも特に、同心円状パターンを生み出す振動的成長のメカニズムを、実験とモデリングの両面から解析し、針状晶間のポイドと流体の相互作用が本質であることを明らかにした。 また、基板上の液滴状溶液の蒸発過程の、運動・蒸発・結晶化を記述するモデルを提出し、振動的な結晶成長を再現することに成功した。
|