研究課題/領域番号 |
13640100
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
南 就将 筑波大学, 数学系, 助教授 (10183964)
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研究分担者 |
田崎 博之 筑波大学, 数学系, 助教授 (30179684)
三河 寛 筑波大学, 数学系, 講師 (10219602)
土居 伸一 筑波大学, 数学系, 助教授 (00243006)
赤平 昌文 筑波大学, 数学系, 教授 (70017424)
青嶋 誠 筑波大学, 数学系, 助教授 (90246679)
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キーワード | エネルギー準位統計 / スペクトル統計 / 量子カオス / ランダム行列 / 分岐過程 |
研究概要 |
量子ハミルトニアンのエネルギースペクトルをunfoldingという操作によって、漸近的に一様分布する実数列に変換すると、あたかも定常点過程の典型的なサンプルであるかのようにみなされる。この数列に現れる点のうち、決まった長さcの区間に属するものの個数の統計をとり、その2次あるいは3次モーメントの、cをゼロに近づけたときの挙動を調べれば、広い意味でのいわゆる準位集積、準位反撥が判定できることは本研究に着手する時点で認識していた。そこでこの方針を、完全可積分な古典力学系の初等的な例である直方体ビリヤードの量子化としてのディリクレラプラシアンに適用し、広い意味での準位統計を厳密に証明しようとした。上記のモーメントを調べることはここではn次元空間内の薄い、大きな(従って体積一定の)領域内の格子点の個数に対するモーメントを調べることと同じである。ところが、我々の目的のためには空間次元nを充分大きくとる必要があり、格子点の個数の解析は予想を越えて煩雑なものとなった。このため今年度は当初の目的である準位おる集積の証明を完結するにはいたらなかった。今後はスペクトル系列のフーリエ級数和による表示と準位統計を結びつけるなど、物理学者たちによるアイディアを再検討することにより、他のアプローチの可能性を探るつもりである。 一方、当初の研究計画には含まれていなかったことであるが、量子ハミルトニアンの単純化したモデルとしてのランダム行列のスペクトル統計に関連して、ランダムな樹形図の頂点数などの分布に関する漸近的な評価を得ることができた。この結果は分枝過程論にとっても新しいものであり、本研究の副産物として意義あるものと思われる。
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