本研究では、自由境界を持つ偏微分分方程式を扱うことになる。 13年度は、全体の技法を構築する上での技術的な観点から、正方領域での同じ問題に対する研究を行なった。 まず、ポテンシャル面を得るための固有値問題を導き、その固有値・固有関数を精度保証付きで求める方法を開発した。この方法では、円環領域などへの発展性を考慮してスペクトル法を用いている。また固有値問題とスペクトル法との相性の良さも考慮している。 さらに、正方領域以外の多角形領域を取り扱うために、非凸多角形領域における精度保証の技法を改良し、有限要素法の射影誤差を従来よりも簡便な方法でかつ精度をあげて評価することに成功した。これは、非凸多角形を凸形のなかに埋め込んで行なう方法であるが、誤差評価の問題を行列の一般固有値問題に帰着させて解析するものである。帰着させる仕方にいくつかのバリエーションがあり、数値実験によって最も良い結果を与える方法を特定した。 14年度では、以下のように研究を進めた。 円環領域での境界条件に適合する精度保証付きスペクトル法を開発するために、対応するBessel関数の線形結合における係数を精度保証付きで特定する必要があった。係数の決定はBessel方程式の微分作用素の固有値問題を解くことに帰着される。そこで、この問題の固有値を値および順位に関する精度保証付きで求める必要に迫られた。 このことは、楕円型作用素の固有値の存在範囲の確定法と非存在範囲の特定法のふたつの方法を組み合わせることで解決された。特に、非存在範囲の特定法はこの研究で新たに開発された方法を用いた。この方法は既存の方法に比べて簡潔であるだけでなく、精度も高いことが数値実験から判明している。 また、Bessel関数そのものの精度保証付き計算法の研究も行なった。その結果第1種Bessel関数について、Matlab言語の上で動く区間演算パッケージIntlabを用いた精度保証付き計算ソフトウェアの開発に成功した。 まとめると、 1.楕円型作用素の固有値の非存在範囲を厳密に特定する方法の開発 2.Bessel関数をもとにした円環領域に対するスペトル法への精度保証法の導入 3.Bessel関数を精度保証付きで計算するためのソフトウェアライブラリの構築 が本研究の成果である。
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