研究概要 |
集合A上のクローン(A上の多変数関数の集合で関数の合成に関して閉じているもの)の全体をA上のクローン束といい,L_Aと表す。本研究では,A上の1変数関数からなるモノイドの全体M_Aを考え,M_AからL_Aの中への自然なガロア対応(Galois connection)を考察した。このガロア対応に伴う基本的な性質を調べることと,このガロア対応を媒介にしてL_Aの構造解明を図ることが研究の目的である。 モノイドM∈M_Aに対し,Mに属するすべての1変数関数と「可換」な多変数関数の全体M^*∈L_AをMのcentralizerという。 14年度には,主に次のような研究を行い,成果をあげた。 1.ガロア対応に関する基本的性質の研究 一般に,相異なるモノイドに対しそれらのcentralizerが同じクローンになる場合が多いことを,われわれはすでに知っているが,置換群に関しては状況はそれと対照的であることを見出した。すなわち,相異なる置換群に対しそれらのcentralizerは常に異なることを示した。Kuznetsov criterionを利用すると,このことを容易に示すことができる。したがって,この結果は,Kuznetsov criterionの有効な応用例と見なすことができる。 2.交代群のcentralizerの特徴づけ われわれは以前に,対称群のcentralizerの特徴づけを与えたが,それに引き続いて,今年度は,交代群のcentralizerの特徴づけを行った。対称群の場合にくらべ,交代群のcentralizerはかなり複雑なクローンになることがわかった。 3.最小クローンをcentralizerとするモノイドの研究 ガロア対応では,比較的小さいモノイドは比較的大きいクローンに対応するのが「自然」である。しかし,その直観に反して,比較的小さいモノイドでそのcentralizerが最小のクローン(射影関数のみからなるクローン)になる例をいくつか見出した。さらに,極小クローンをcentralizerとするモノイドの研究は今後の課題である。
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