研究概要 |
1.導電方程式に対して,局所化されたDirichlet to Neumann mapから,境界での導電係数の値および境界法線方向の微分の値を同時に再構成する公式を与えた。これは,導電体の表面のある部分において,電気変位と電流を測定することで,その表面近くでの導電率を決定する境界値逆問題に対する数学解析での1つの解答である.この公式では,境界での導電係数を再構成し次にその値を使って境界法線方向の微分の値を再構成するという従来の帰納的再構成ではなく,導電係数と法線方向の微分の値とを同時に再構成しているところが画期的である.この公式は,極限値として再構成値を与えるものであるが,さらに,極限変数を有限で打ち切った場合に再構成値との誤差がどれぐらいであるかを,極限変数の負巾で評価した.以上の研究成果を,平成14年1月に香港で開催された逆問題国際研究集会にて発表した.誤差評価を含んだ以上の結果は,数値実験においても有用と予想される. 2.米国Kentucky University数学科のC.S.Man教授の招聘を受け,組織異方性をもった弾性体に対する構成方程式の導出方法と,対応する非等方弾性体型の方程式を導出について示唆を得た。一方,非等方弾性体方程式を扱うStrohの定式化を基礎にして,Surface impedance tensorを局所化されたDirichlet to Neumann mapから再構成し,つぎにSurface impedance tensorから弾性係数を再構成することで境界値逆問題が取り組み可能であることがほぼ確信された.従って,組織異方性をもった弾性体のSurface impedance tensorの導出を行うべきとの認識に至り,その導出を当面の研究計画としている.
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