1.非自律非線形可積分二階常差分方程式系の研究において、従来考えられていなかった前進後退非対称な系をいくつか発見し、それらに対する適当な従属変数変換を見出すことによって、方程式の分類、帰属を与えるとともに、さらに偶奇非対称な系へと拡張することに成功した。これによって双四次の保存量をもつ系に引続き、新しいnon-QRT型の可積分離散系のクラスを考えられるようになった。 2.Painleve解析におけるLaurent級数解の特異点構造と、離散発展方程式に対する特異点閉込め解析の特異点パターンとの関係を議論することにより、連続な時間変数に関する特異点と特異点閉込めにおける微小パラメータとの共通性を明らかにした。またその性質を利用して、離散系の中にひそむ隠れた無限小変換の対称性を見つけだす方法を定式化し、既知の系に対して適用してその有効性を確かめた。これによって、離散的な変換に対する対称性だけでなく連続変数に関する変換の対称性も含めて、系がより大きな対称性をもつかどうかを判定できるようになった。 3.格子KdV方程式に対して相似退化を適用することにより、離散Painleve方程式系を含む様々な非自律非線形離散可積分系を構成し、それらに対する自己双対な双線形形式、Schlesinger変換、isomonodromy変形問題などを、無限次の行列を用いて定式化した。また、離散系の可積分性を判定する方法として、特異点閉込め解析と代数エントロピーの方法を併用する処方箋を与え、その効率性を確かめた。
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