1.非自律非線形可積分二階常差分方程式系において、適当な従属変数変換を導入することにより、線形化可能写像の場合であっても代数的エントロピーを正の値にできる場合があることを示した。これは従来信じられていたような、初期値に対する次数増大性による可積分性の判定分類に反する新しい例であり、これによって新しい非自律非線形可積分離散系のクラスを考えられるようになった。 2.離散Painleve方程式と、その解を係数にもつ一次分数変換からなる結合系を考え、そのクラスの三階可積分常差分方程式に対する初期値の次数増大性を調べた。その結果、一般に次数は三次で増大することが示され、特殊な場合として写像が特異点閉じ込め条件をみたすときには、次数増大が二次に逓減されることを見い出した。さらに同様の手法で、初期値の次数増大がN次で与えられるようなN階可積分常差分方程式を構成する方法を提出した。また、離散Painleve方程式の自律極限がQRT写像として分類されることを、対称、反対称の場合にそれぞれ示した。 3.様々な型のリダクションを施した1+1次元離散戸田格子方程式に対して、その一般解のHankel型行列式表示を与えた。T函数の行列式表示の各成分は、一般的な初期値T_0、T_1から帰納的に計算される。これは、Painleve方程式の古典解に対する行列式表示の一般化とみなすことができる。また、Painleve V方程式のあるクラスの有理解が、一般化指標によって与えられることを示した。
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