研究概要 |
研究実績は以下のとおり.重調和作用素,-Δ^2,は弾性論や流体力学のいろいろな微分方程式で現れる.それらの微分方程式の解の性質は,対応する"確率擬過程"を考える事により"粒子の確率運動"として見通しよく捉えられる.我々は既に ∂_tu(t,x)=-Δ^2u(t,x) (1) の基本解を推移確率密度とする確率擬過程(=BPPと呼ぶ)を構成しているが,本年度は,"BPPの境界での挙動"を調べるための情報収集と共同研究を行った. 1.西岡は,半直線上に制限したBPPの境界での挙動を調べた.BPPは,単極子と双極子の2種類の粒子からなることが示されている.単極子と双極子は,境界でそれぞれ"吸収/反射/滞留"という挙動をとるが、その挙動と"(1)の解析的な境界条件"との関係を明らかにした.この結果は,Nishioka[2001]に発表されている.また,従来から知られている"吸収/反射/滞留"以外の"高次の反射"という境界での挙動を取りうることも判り「BPP研究集会」(2002)などのシンポジウムで講演した. 2.佐藤は,負の確率も取るrandom walkの極限として,BPPを構成した.彼の方法は,境界で双極子が出現する様子が直感的に捉えられる優れた物で,「確率過程とその周辺」(2001)などのシンポジウムでの講演の他,Sato[2002]にも発表予定である.またこの構成法は,"多次元境界での応力分布"の数値計算への理論的保証を与えることになり,重要な工学的応用が見込まれる. 3.重調和作用素を持つ微分方程式の解は,有限次元空間上力学系で近似できる.鷲見はそれを,あるヘノン型写像として扱った.この写像は微分同相写像であるが、より低次元の空間上で定義される非可逆可微分写像の摂動としてあたえられる.そして,エルゴード理論の立場から、そのカオス現象を解析した.この結果は、「力学系の実解析」(2001)などのシンポジウムで発表されている.
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