研究概要 |
研究実績の概要は以下のとおり. 重調和作用素,-Δ^2,は弾性論や流体力学のいろいろな現象を記述する微分方程式に現れる.まず,我々は,その重調和作用素をもつ発展方程式の基本解を推移確率密度とする確率擬過程(=BPPと呼ぶ)を構成した.つぎに,半直線上に制限した.BPPの境界での挙動を調べ,(通常のBrown運動などと異なり)単極子と双極子の2種類の粒子が現れる事を示した. この結果は,Nishioka[1997,2001]で発表したが,それをふまえて,本年度は,(1)その結果の工学への応用,(2)(通常の確率過程である)Brown運動の新しい境界条件の発見を行った. (1)いま,吊り橋などをモデルとする半直線の棒に,垂直な方向の荷重を加える.すると場所x【greater than or equal】0での棒の下方向への変形量v(x)は,端点x=0での棒の保持状況により大きく異なる. ここで,(土木工学などで使われる)構造力学では,端点として,固定端,蝶番端,スライド端,自由端の端点4種類があることが知られている.我々は,棒の変形をBPPで記述した.つぎに,それぞれの端点で"単極子と双極子がどのように振る舞うか?"を決定し,変形量の時間発展v(t,x)をもとめ,v(t,x)→v(x)と定常変形量に収束することを示した.この結果は,Nishioka[2004]として発表した. (2)半直線上の熱方程式∂_tu(t,x)=(1/2)∂^2_xu(t,x),x>0,にたいし,境界条件∂^k_xu(t,0)=0を設定する.我々は,境界条件の微分の階数kが,内部での階数2より大きい場合,k【greater than or equal】3,にこの問題を考え,解の一意存在をしめし,それに対応するBrown運動の構成した. すると対応するBrown運動はBPPと類似する挙動をとり,境界で単極子だけでなく,双極子を含む多重極子が現れる事が示された.この結果の口頭発表は,確率論シンポジウム[2003]で行った.
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