研究概要 |
本研究は,グラフ理論的な計算問題や絡み目に関係した計算問題の計算量を解析することを目的としている.以下,本年度の主な研究成果を述べる.(1)任意に与えられた二つの部分k-木(Partial k-tree)に対して,それらの間の同型写像の個数がO(n^<k+4>)時間で計算可能であることを示した.ここで,kは木幅(tree-width)を表し,nは頂点の個数を表す.(2)2次元格子上の単純道(self-avoiding walk)の個数を求める問題に関して,2次元格子に対してある種の系統的な制限を施した場合には#P-完全となることを示した.本研究は現在も継続中である.(3)arborescent linkに対する多項式時間アルゴリズムを構成し,そのアルゴリズムに関する算機実験を行った.その結果,標準的なダイアグラムに表現された2橋絡み目ダイアグラムとclosed 3-braid絡み目ダイアグラムが入力されると,それらのジョーンズ多項式を線形時間で決定するアルゴリズムを開発することに成功した.(4)絡み目の非自明性判定問題を解く定数ラウンド対話型証明系が存在することを示すことによって,この問題がNP-完全とはなり得ない根拠を提示した.(5)NMRによって計測されるスペクトルデータの解析を定式化したある種の制約が付いた二部グラフ上の最大重みマッチング問題に対して,MAX SNP-困難となることを示すとともに,近似アルゴリズムを提案し,その近似率に関する理論的かつ実験的な性能解析を行った.
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