研究概要 |
・不変式論と保存則の研究: 発展方程式の局所的な保存則を調べるには,場の変数とその高階の空間微分に関する微分多項式環における形式的変分解析の手法を用いる.このような微分多項式をゲルファント・ディキー変換すると対称多項式が得られ,保存則を調べるために重要なオイラー作用素の核を求める問題は,対称多項式のなす環ではオイラー群とよばれる有限群の不変式を求めることに対応している.そこで,有限群の不変式環の生成元を求めるストルムフェルスのアルゴリズムを数式処理システムAsirに実装すると共にアルゴリズムの検討を行った. ・ダルブー・ラメ方程式及びダルブー・ラメポテンシャルの研究: 2次のダルブー・ラメ方程式のモノドロミー群を具体的に計算した.ダルブー・ラメポテンシャルはある種のKdV方程式を満たすことはすでにわかっていたが,それを標準的なKdV方程式に変換する変換の具体的な形を求め,その結果を利用して楕円ソリトンをコンピュータグラフィックで描き,ソリトンの非線型相互作用の様子を視覚的に表現すると共に,その特異点の位置を具体的に計算する手法をあわせて確立した.これはKdV方程式などの非線型発展方程式の特異性を有する解の極の運動を記述するカロジェロ・モーザー・サザーランド系の厳密解法になっている. ・離散パンルベ方程式の研究: 離散パンルベ方程式にはアフィンワイル群が双有理的に作用する.特にq-パンルベIV方程式と呼ばれる離散パンルベ方程式について,その対称性がA型拡大アフィンワイル群であることを示し,さらに,この事実を拡張してA^<(1)>_<m-1>×A^<(1)>_<n-1>型のアフィンワイル群対称性をもっ離散力学系の階層を構成し,その階層がq-KP階層の簡約化により得られることを示した. ・可解カオスの研究: 二つの可解カオス系である,算術調和平均アルゴリズムとウラム・ノイマン写像が行列式解をもつことを示した.このようなこのことを示すには行列式に対するある加法公式とリッカチ型の差分方程式が重要な鍵となる.さらに,これらに対応して,行列式解をもつような可解カオス系の無限階層を2種類構成した.
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