研究概要 |
先ず必ずしもassociativityを仮定しない単位的環Rを考え、R上のどんなpolynomial identityがRの可換性を引き起こすかを考察した。得られた結果は、Johnsen et al.,Gupta,Khan等の諸定理を含むものである。次にスペクトル写像定理と関連して、コンパクト可換群上の自然なスペクトルを持つ有限なBorel測度の全体が和に関して閉じているための必要十分条件はもとの群が離散的であることを示し、その応用として、局所コンパクト非離散可換群上の有限なBorel測度で、対応する群環上の乗作用素が分解不可能であるようなものの存在を示した。Banach空間上の不等式に関しては、Banach空間X及び指数s,r【greater than or equal】1に対してHlawka型不等式が成り立つことを示し、XがHilbert空間の場合、一部の指数を除きその最良係数を決定した。またWirtinger及びBeesackの積分不等式を統一的に扱う新しい積分不等式を考案し、被積分関数の値域がBanach空間である場合を考察した。またBanach空間上のノルムに関する三角不等式の等号が成り立つ必要十分条件を与え、これを単位的C^*-環の場合に応用した。Banach空間上の安定性に関しては、微分作用素のHyers-Ulam stabilityを取り上げ、先ず実可換C^*-環に値を取る開区間上の関数に対する微分方程式f=λf(λ≠0)がHyers-Ulam stabilityを持つことを示した。更に一般の複素Banach空間に値を取る場合まで考察し、微分方程式f=λf(λ≠0)がHyers-Ulam stabilityを持つための必要十分条件はλが純虚数でないことを示し、その場合の最良係数を決定した。 これらの結果はしかるべきジャーナルに掲載もしくは掲載予定である。詳細は研究発表の欄を参照されたい。
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