研究概要 |
m次元複素双曲多様体Mからn次元複素空間内の有界領域N'の商空間として表現できる複素多様体Nへの非定値正則写像の剛性と有限性について研究した.得られた結果は次のとおり. Mが発散型と呼ばれる多様体の場合には,MからNへの正則写像全体の次元はN"の本質的境界次元を超えない.また,支配的な正則写像の場合はこの次元は0になり,この正則写像は変形を持たない.この際,正則函数の境界値による一意性定理をn次元単位球内の有界正則写像の場合に拡張した.上述の結果を用いて,支配的な正則写像の有限性や,Nがある種の多様体の場合の正則写像の有限性を証明した. また,境界付きリーマン面の擬等角変形を行ったときのDirichlet解の変動の研究を行い,擬等角変形のパラメータに関しDirichlet解が実解析的に変化することを示した.さらに,無限次元タイヒミュラー空間においては,有限次元の場合と異なり,タイヒミュラー距離とサーストン距離が定める位相が異なることを示し,それが一致するための十分条件を与えた. 分担者の田辺は2つの有限型リーマン面に関してフックス群モデルが同型ならば,位相同型である,というFenchel-Nielsenの定理の,無限型リーマン面への拡張を行い,また角は,有理半群の力学系と,それに関係してfibered rational mapの力学系を調べた.さらに半双曲性を持つ有理関数半群の力学系について調べ,アトラクタの存在を示し,ジュリア集合のハウスドルフ次元の評価を行った.また,付随する歪積写像のファイバージュリア集合が連続的に並んでいることを示した. いずれの場合も,「半双曲性」という概念を定義し,力学系がその性質を持つときの十分条件,また必要条件を調べた.
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