研究概要 |
平成14年度の研究計画は、以下の通りであった。(1)位相空間経路積分の解析的研究を行い,経路積分における摂動理論に数学的厳密性を与える。(一ノ瀬)。(2)経路積分で与えられる母関数の汎関数微分の研究(一ノ瀬)。(3)振動型積分作用素の有界性定理の研究(森本)。(4)場の理論における経路積分の研究(廣川)。(5)摂動理論の関数解析的研究(谷内)。 研究実施は概ね成功したが,幾つか未完成の部分もあった。以下に具体的に示す。 一ノ瀬は,位相空間経路積分の研究を行い,L^2空間及び関数空間B^a={f∈L^2;Σ_<|α|=a>(||x^αf||+||∂^α_xf||)<∞,a=1,2,...での収束を示し,これを用いて相関関数,正準交換関係等の経路積分表示を与えることに成功した(J. Math. Soc. Japanに発表予定)。次に上記の結果を拡張する研究を行った。経路空間上の汎関数Π^k_<j=1>z_j(q(t_j),Π(t_j))(Πは力学的運動量)の位相空間経路積分が収束するための,関数Π^k_<j=1>z_j(q,Π)についての必要条件及び十分条件を導いた。次に収束する汎関数位相空間経路積分の作用素による表示を与えた。この結果はFeynmanが発見法的に与えていたものに厳密な証明を与えたもので,摂動理論に数学的厳密性を与えるときの基本的結果となるものである(現在投稿準備中)。これらの結果は,夏の阪大シンポジウム,松阪シンポジウム,松山シンポジウムで発表した。(2)については,(1)についての研究が予想外に進んだため時間がなく残念ながら着手できなかった。 森本は非線形退化型楕円型方程式の準楕円性を示し(Asterisque),広川はボーズ場の量子論の基底状態の遷移を調べ(Phys. Lett. A),谷内は3次元Euler方程式の爆発解の研究を行なった(J. Math. Fluid. Appl., J. Diff. Equation)。
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