研究概要 |
平成15年度の研究計画は、以下の通りであった。(1)汎関数の位相空間経路積分の収束とその作用素による表示の結果を纏め投稿する(一ノ瀬)。(2)経路積分で与えられる母関数Z(J)fの存在と,Z(J)fのJについての汎関数微分公式を与える(一ノ瀬)。(3)経路積分における摂動理論に数学的厳密性を与える(一ノ瀬)。(4)振動型積分作用素の有界性定理の研究を行う(森本)。(5)場の理論における経路積分の研究を行う(廣川)。(6)摂動理論の関数解析的研究を行う(谷内)。研究実施は概ね成功したが,幾つか未完成の部分もあった。以下に具体的に示す。 一ノ瀬は,汎関数の位相空間経路積分の収東とその作用素による表示の結果を纏めJ.Functional Analysisに投稿した。次に配位空間経路積分で与えられる母関数Z(J)fについての研究を行い,以下の研究成果を得た(現在投稿準備中)。区問[0,T]上のR^n値連続関数全体の成す空間をXとする。Xには通常のノルムを入れる。関数空間B^a={f∈L^2;Σ_<|α|=a>(||x^αf||+||∂^α_xf||)<∞}(a=1,2,...)を導入する。J∈Xとする。このとき,電磁場とそのポテンシャルについての適当な仮定の下で,任意のf∈B^a(a=0,1,…)に対して母関数Z(J)fがB^aで存在することがわかる。但し,B^0=L^2。次にf∈B^<a+k>(k=0,1,…)とする。このとき,汎関数Z(J)f : X→B^aは,Jについてk回フレシェ微分可能であり,この微分は相関数を与えることが証明できた。この結果は物理学で用いられている公式に厳密な証明を与えるものである。この結果は,研究集会「超局所解析と古典解析」(2003年12月19日-21日)と松山キャンプ(2004年1月5日-7日)で発表した。尚(3)については,(2)についての研究が予想外に進んだため時間がなく残念ながら着手できなかった。 森本は,(4)について準楕円性の研究を行い叉Wick解析を用いてFefferman-Phongの定理の簡単な証明を与えた(preprint)。広川の場の理論における経路積分の研究(5)は進展しなかった。谷内は,(6)についてBesov空間の研究及びそれのNavier-Stokes方程式への応用を行った(Kyushu J.Math)。
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