研究概要 |
平成12-13年度の研究内容は,(1)リーマン面上の単純分割閉曲線の性質を解析的に特徴付ける,(2)タイヒミュラーモジュラー群(写像類群)の作用を角度変数で表現する,に大別出来る. 単純分割閉曲線は,一つの曲面を二つに分割あるいは二つの曲面の連結和をとる際に考えられる等,曲面上で注目される曲線である.(1)に関しては,リーマン面S上の単純閉曲線Lが分割していることの特徴付けを,Sを表現するフックス群Gの特殊線形群SL(2,C)への持ち上げを用いて行った.例えば,Sが種数p(pは1より大きいとする)の閉リーマン面の場合には,次の主張になる:Gの持ち上げの個数は2の2p乗となる.Lに対応するGの一つの元をgとする.このとき,Lが分割しているための必要十分条件は,Gの任意の持ち上げにたいして,gを持ち上げた行列のトレースがいつでも負になることである. このように,位相的性質を解析的性質で特徴付けすることが出来る. 以前,私はタイヒミュラー空間を大域実解析的に簡明に表現するために,新たな角度変数を導入した.そして,代表的なタイヒミュラー空間の場合に,角度変数のみの変数空間は解析しやすい集合であることを示していた.角度変数は,標識付きフックス群の生成元やこれらの積の軸の交角に対応している.軸の配置は非常に高い「規則性」を持つことが分かる.(2)に関しては,軸で表される特別な双曲多角形に注目し,角度変数の関係式を導き,タイヒミュラーモジュラー群の作用の表示を考察した. (1,1)型つまり穴あきトーラスを表現する標識付きフックス群にたいして,次を示した: この群の標準生成元系を(A,B)とする.A,B,BAの軸で表される双曲三角形を別の軸で表される双曲三角形に写す作用で,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元の作用を理解出来ることを示した.これから,双曲三角法を用いて,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群を角度変数のみで表示することが出来た.
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