研究概要 |
研究内容は,(1)タイヒミュラー空間を大域実解析的に幾何的な量で表現すること,(2)この幾何的な量で,タイヒミュラーモジュラー群(写像類群)の作用を表現すること,に大別出来る. 私は標識付きリーマン面上の測地線の交角からなる角度変数を新たに導入して,タイヒミュラー空間を大域実解析的に簡明に表現することを考察した.そして,代表的といえる(1,1),(2,0),(3,0)型タイヒミュラー空間の場合に,角度変数のみの変数空間は解析しやすい集合であることを示していた.角度変数の性質は,一次変換の幾何から捉えることが出来る.実際,角度変数は標識付きフックス群の生成元やこれらの積の軸の交角に対応している.軸の配置の規則性を調べることから,角度変数の関係式等が得られる.タイヒミュラーモジュラー群の元の作用を,軸から決定される特別な双曲多角形を別の双曲多角形に写す作用として考察することを試みている. (1,1)型タイヒミュラーモジュラー群にたいしては,次を示した: (1,1)型つまり穴あきトーラスを表現する標識付きフックス群の標準生成元系を(A, B)とする.A, B, BAの軸で表される双曲三角形を別の軸で表される双曲三角形に写す作用で,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元の作用を理解出来ることを示した.これから,双曲三角法を用いて,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群を角度変数のみで表示することが出来た.
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