研究概要 |
次にあげる流体及び電磁気学に現れる具体的な特異摂動極限問題の考察を通して,解決すべき問題点の明確化と,その解決に向けて必要な数学的理論の構築を行った。 1.「境界のある領域における圧縮性Navier-Stokes流の非粘性極限に関する研究」 漸近解析的手法を用いて上記問題を考察する際に必要となる,Prandt1方程式の初期境界値問題の存在定理を示すことを目標に考察を進めた。この結果,Fokker-Planck型方程式を線型化方程式として採用することにより,従来より良い評価式が得ることが出来たが,所謂「解の微分可能性の損失」という現象が現れることも分かった。従って,今後はこの「解の微分可能性の損失」を取り込んた形の存在定理の可能性を探っていく予定である。 2,「非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の滑らかさと渦度の関係に関する研究」 3次元有界領域における非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の滑らかさと渦度との関係を与える,あるa-priori評価を示した。更に,有界領域上の非圧縮ベクトル場に対する拡張されたBiot-Savartの定理をGreen関数を伴った形で示すことが出来た。 3.「Maxwell方程式に対する初期境界値間題の完全導体壁極限について」 3次元空間のある領域外で電気伝導度を無限大にするという特異摂動極限問題を考えることにより,完全導体壁の境界条件を満足するMaxwell方程式の初期境界値問題の解を構成できないか,という問題を考察した。この結果,既存の定理では仮定されていた初期値のサポートが境界に接していないという条件を,より自然な高次の適合条件に弱めることができた。
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