研究概要 |
考察している問題は3次元空間の有界領域におけるNavier-Stokes方程式に対する初期境界値問題である。これに対し,与えられた初速度が十分小さければ無限時間にわたって解の存在が証明されている。一方において,大きい初速度が与えられたとき,「時間大域的強解(global strong solution)の存在問題」は未解決のままである。そこで,手がかりとして物理的背景の考察を注意深く試みた。そうすると,Navier-Stokes方程式は流体の変形速度と内部応力との間に「線形関係」を仮定して導かれたものである,すなわち応力テンソルが流体の変形速度 ε^<i,j>=(1)/(2)((∂u^i)/(∂x^j)+(∂u^j)/(∂x^i) の関数であると考えて,変形速度ε_<i,j>を変数としてTaylor展開をし,0次と1次の項を残して,2次以降の項を取り除いた近似式をもとに導かれたものである。したがって,変形速度が十分小さいときは,Navier-Stokes方程式は流体の運動を良く表している。しかし変形速度が大きくなる時間においては,すなわち速度勾配が大きくなる時間においては,注意深い洞察が必要である.この研究では,粘性項の'modincation'を考案することに到達した.この考えに基づけば,流体の運動は「Newtonian流からnon-Newtonian流に変化する」.このようにして,問題の解は無限時間にわたって存在し続けることになる.
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