1.半単純Lie群上のHardy-Littlewood最大関数の弱L^1有界性について、従来から知られていたStrombergの証明を詳しく解析し、それを簡略化した。証明の本質が、球関数の積公式に現われる積分核の評価であることに注目し、いくつかの球関数に関する性質を用いて証明を見通しのよいものにすることができた。この方法は実ランクに依存しない一般的な方法である。この応用として球体を用いて定義される最大関数を、立体を用いた場合にも拡張し、その強L^Pおよび弱L^1評価を得ることができた。 2.球関数の解析から、複素ヤコビ変換に注目した。ヤコビ変換に関する研究は、70年代から盛んに行われ、KoornwinderやFlensted-Jensenにより、L^2理論を始めとする多くのユークリッド空間上のフーリエ解析との類似性が得られている。しかしながら、第二種の解を用いて定義される複素ヤコビ変換に関してはあまり研究されていない。今回、非減少関数に対する複素ヤコビ変換の逆変換公式を超関数め意味で求めることができた。ヤコビ変換と複素ヤコビ変換の違いは、ユークリッド空間では、偶関数に対するCos変換と複素フーリエ変換に他ならず、本質的な差は無い。しかしながら、一般のヤコビ変換においては、対応する複素ヤコビ変換はいろいろな特異性を持っていることが分かった。特に複素ヤコビ変換においては、C関数からの留数の寄与が消えることが分かった。この特異性とそれに付随する解析は今後の研究課題である。 3.ヤコビおよび複素ヤコビ変換はワイルの一般化した分数積分を用いて記述することができる。このことから関数fに対して、f(x)=[f](cosh x)により関数[f]を定義すれば、ヤコビ変換はユークリッド空間上の分数積分の理論に帰着する。この部分は中井が中心となり、解析をおこなった。今後、L^P-Lip対応などをヤコビ変換に拡張できれば、非等質空間上の新しい解析が期待される。
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