研究概要 |
実ランク1の半単純リー群G上の両側K不変関数からなる実Hardy空間H^1(G//K)の特徴付けを引き続き試み成功した。この証明の過程において、実解析学における分数積分・微分に関する理論およびその手法を用いた。この研究テーマである表現論と実解析の融合が実った形となった。 ユークリッド空間Rにおいては、実Hardy空間H^1(R)は最大関数を用いて定義される。さらにアトム分解を用いて定義されるアトミックHardy空間H^1_<∞,0>(R)すれば、H^1(R)=H^1_<∞,0>(R)となる。本研究のテーマの一つは実解析学におけるこの美しい関係をG上のK両側不変関数に対して拡張することである。G上においても実Hardy空間H^1(G//K)は径最大関数を用いて定義され、アトミックHardy空間H^1_<∞,0>(G//K)もルベーク測度dxをウェイトをもつ測度Δ(x)dxに置き換えることにより自然に定義できる。しかしながら、Δ(x)が指数増大をもつため、H^1(G//K)≠H^1_<∞,0>(G//K)となる。そこにH^1(G//K)の特徴付けの難しさがある。今回、次のような形の特徴付けが得られた。Wをアーベル積分にe^<ρX>を掛けた積分変換とし、W^<-1>をその逆変換とする。このとき、H^1(G//K)⊂W^<-1>(H^1(R))が容易に得られる。ここでH^1_<∞,0>(G//K)^+を、H^1_<∞,0>(G//K)を定義する各アトムのモーメント条件をアトムの半径が1より小さいもののみに課して定義される空間とする。このとき H^1(G//K)=W^<-1>(H^1(R))∩H^1_<∞,0>(G//K)^+ となることが示された。証明に際しては積分変換Wを W_μf(x)=∫_xf(s)(ch s-ch x)^<μ-1>shx dx の形をした分数積分の合成に分解し、その性質を実解析的手法によって詳しく調べることが重要となった。今後は実ランク1の仮定を落とした場合のより一般的なH^1(G//K)の特徴付けを考えてみたい。
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