本研究の成果として、実解析における分数積分の理論の有効性およびその応用として半単純リー群上の調和解析における有効性が確認できた。前者に関しては、研究分担者の中井が主として行い、積分作用素の各種の関数空間への作用を詳細に調べた。特に空間の一般化と有界性との関連を詳細に調べた。後者に関しては、河添が中心となって研究し、分数積分・微分作用素の理論を半単純群上で展開し、実ハーディ空間の理論を導入することに成功した。この意味において当初の目標であった実解析と表現論の融合が具体化できたと思っている。 最大関数やアトム分解によって定義される実ハーディ空間の理論は、ダブリング条件を満たす等質型空間まで拡張されている。しかし非等質型空間においてはあまり多くの結果は知られていない。本研究においては非等質型空間として実ランク1な半単純リー群Gを例にとり、その上のK両側不変関数を対象として実ハーディ空間の構成を試みた。フーリエ・ヤコビ変換による調和解析であり、指数増大度をもつウェイと空間の理論になる。研究期間の前半においては、アーベル変換により、フーリエ・ヤコビ変換による調和解析をユークリッド空間R上の調和解析に帰着させる方法を試みた。この際、アーベル変換は拡張された分数積分で与えられる。この分数積分作用素を実解析的手法を用いて解析した。後半は、さらにこの積分変換と逆変換-分数微分-を調べ、最大関数とアトム分解によって定義さえるG上の実ハーディ空間の特徴づけを与えた。最終的な定理は次のように与えられる。 Wをアーベル積分にexp(ρx)を掛けた積分変換とし、Vをその逆変換とする。このとき、H1(G//K)⊂V(H1(R))となる。ここでH1(G//K)はG上の、H1(R)はR上の径最大関数によって定義される実ハーディ空間である。さらにG上のアトムのモーメント条件をアトムの半径が1より小さいもののみに課して定義する空間をA1(G//K)+とする。 このとき H1(G//K)=V(H1(R))∩A1(G//K)+ となる。 この定理の証明においては、分数積分・微分やアトム分解に関する実解析的な手法が大いに役立った。
|