代表的な代数幾何的楕円ポテンシャルであるn次Lameポテンシャル(n≧2)が、ある種の退化条併を満たす場合に、Darboux-Lame方程式について、スペクトル保存変形とモノドロミー保存変形の両方の立場から研究を行った。一般のn≧2に対して、その係数が高次KdV方程式を満たすことを証明することにより、スペクトル同型族であることを証明した。その結果は、Calogero系との関連も含めた論文として現在執筆中である。 モノドロミー保存変形については、n=2の場合に、変形パラメータが特殊な代数曲線上にある場合に限られることを証明した。また、その場合には楕円曲線上の2次Lame方程式が、その楕円曲線から1次元射影直線へのある特殊な3重被覆写像で、4個の確定特異点を持つHeun型方程式に変換されることを示した。このHeun型方程式は、変形パラメータが0の時に、確定特異点が3個のGauss型超幾何方程式に退化することも明らかにした。さらに、このことを用いて、モノドロミー表現を具体的に計算した。これらの結果は、いくつかの国際学会で発表するとともに、諭文としてまとめて学会誌に投稿し、現在印刷中である。 2次Lame方程式を楕円曲線上の微分方程式と見なしたとき、その楕円曲線に対応するJacobi多様体はファイバーリングの構造を有するが、その事実を一般化する為に、低次元多様体のファイバーリング条件を研究し、3次元多様体が円周上でファィバーリングされる必要十分条件として、その多様体が適切なk周期作用を許容することであることを明らかにした。これらの結果は論文としてまとめて、学会誌に投稿し、現在印刷中である。 モノドロミー群等の有限群を研究するには、その不変式環の構造を調べる必要があるが、その為にその生成元を効果的に計算するアルゴリズムの研究を行い、それを数式処理システムAsirに実装した。
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