1.Longo-Rehren部分因子環は、Hopf代数における量子ダブルの作用素環版とみなせる対象であり、多くの圏論的良い性質を持つ。それから得られるモジュラ群の表現を具体的に記述することは、部分因子環から得られる3次元多様体の不変量を計算する上でも重要である。以前の研究で得られていたCuntz代数の自己準同型を使うことにより、多くの具体例においてLongo-Rehren包含関係に付随するセクターの構造や、それから得られるモジュラ群の表現の記述を行った。これらの例の中にはE6部分因子環やHaagerup部分因子環など量子群的手法では現在のところ得られないものを多く含む。 2.コンパクト群の因子環への作用の不動点環の相対可換子環がスカラーのみからなるとき、その作用は極小的であるという。極小的作用はコンパクト群の作用の中でも最も性質の良いものだと考えられており、コンパクトLie群の無限テンソル積作用は極小的作用の典型例になっている。ところがPowers因子環上の量子群SUq(2)の無限テンソル積作用は、極小的ではないことが部分因子環的議論により知られていた。このような現象が起こる理由を量子確率論的議論により明らかにし、より一般にKac代数でないコンパクト量子群の無限テンソル積作用は極小的にはなり得ないことを示した。 3.単純C^*-環のPimsner-Popa型不等式を満たす条件付期待値は常にquasi-basisを持つことを示した。この命題は単純でないC^*-環に対しては成立せず、Jonesの指数理論をC^*-環に一般化しようとするときの障害になっていた。この結果は多くの応用を持つ。例えば、単純C^*-環への有限群の外部的作用については常にガロワ対応が成立することがこの結果より導かれる。
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