研究概要 |
3年間での研究の目的は粘菌の形態形成をつかさどるKeller-Segel方程式の解構造の研究を行ってきた.この研究は,1983年のChildress-Percusの予想に端を発している.すなわち,彼らの予想は,初期の粘菌の密度に閾値(8π)があって,この値より小さければ,解は時間大域的に存在し,この値を超えると爆発する解が存在するというものである.有界領域においては,永井は宮崎大学の仙葉および鈴木とともに永井ー仙葉ー吉田の結果:「初期条件が小さく球対称解のとき,Keller-Segelの解は爆発しない」を,さらに発展させ,初期条件が小さく爆発がおきるとき,境界の近くに爆発点があること,爆発点の個数等を示した.さらに吉田は内藤,鈴木等の協力を得て,全空間領域での解を考察した.特に,自己相似解に対して,Childress-Percusの予想をほぼ完全に肯定的に解決した.それには幾つもの解決しなければならない,問題が出てきた.それらを一つずつ年を追って解決した.それを箇条書きすると,(1)解は粘菌および化学物質の濃度であることを考慮して非負性と遠方で0になる条件のもと,自己相似解の減衰のオーダーをしめすことが必要(2)Lieuville型の定理が必要(3)粘菌形成方程式系の自己相似解が満たす方程式は2連立楕円型微分方程式系になる.この2連立方程式系を単独楕円型方程式に減らすことが必要(4)moving plane法は楕円型微分方程式に対して有用である.この方法を利用して解の形状が球対称になることを決定する事が出来た.(5)粘菌の初期濃度をパラメータとして取るとき,解とパラメータとの間の大域分枝を決定する事が出来た.(6)Childress-Percusの予想の解決. 以上の成果は次ページの研究論文に発表されている。
|