交付申請の目的で述べたように、4次元Wess-Zunimo-Witten(WZW)モデルの構成と、3次元球面よりリー群への写像群の中心拡大を研究した。主な成果は、(1)WZWモデルの公理は、Atiyahの位相的量子場の公理を直線バンドル化したものにPolyakov-Wiegmannの積構造を加えて記述されることを見いだし、共形平坦多様体の圏よりこの圏への函手としてWZWモデルを構成したこと、(2)3次元球面よりリー群への写像群の中心拡大を構成したことである。この理論の途中経過を、2001年度幾何学シンポジウム(茨城大学)において講演した。この他の研究として、P^2(C)上のSU(2)主束を局所座標において与える推移行列と標準的な接続の式を計算した。これらはよく知られた対象であるが実際の行列表示の計算は新しい結果であると思われる。交付申請書の研究実施計画で述べたように、9月25日から28日のあいだ、早稲田大学理工学部において「量子化の幾何学」の題のもとに、35人の出席者を集め11の講演が行われた。量子コホモロジーとグラスマン多様体、変形量子化、非線形シグマ模型、ツイスター方程式、ディラック方程式、共形平坦構造と離散群等について講演があった。また、10月の日本数学会に際し来日したJ.Mickelsson教授と上記の写像群の中心拡大に関する結果について討論し、不十分な点の指摘を受けた。その後これは改良され、3月の申請者のJ.Mickelsson教授訪問において、ふたたび検討し、今後の方向について討論した。
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