研究概要 |
研究課題のうち、スピノール解析については、4次元共形平坦多様体上のディラック作用素の調和スピノールの諸性質を調べた。平成13,14年の、積分表現、局所解の存在、ルンゲの近似定理、ミターク・レフラーの定理、大域解の存在の研究に続いて、平成15年は、有理型スピノールとそのDivisorの理論を展開し、有理型スピノールのコホモロジー群についてリーマン・ロッホ型の定理を証明した。その結果はBirkhauser Verlagより出るTrends in Mathematics, Advances in Analysis and Geometry(2004)に論文として出版される予定である。 研究課題のうち、場の理論の幾何学については、4次元Wess-Zumino-Wittenモデルの構成を行った。4次元半球面に対してMickelssonが得ていたWess-Zumino-Witten作用の定義を、一般の境界を持つ4次元共形平坦多様体へと拡張、公理系として定式化し、その構成を行った。この方法は4次元WZWモデルの構成という以上に、漠然と考えられていた対象を明確に定義した点でも重要である。この過程で、WZW場の境界値、すなわち3次元多様体からリー群への写像の群の、互いに双対な2つの可換拡大を構成した。この結果は論文として、Journal of Geometry and Physics,47(2003),pp.235-258,に発表された。 続く研究として4次元多様体上の平坦接続のモジュライ空間の幾何学的量子化を考えているが、その準備として、4次元Yang-Mills接続の空間上にシンプレクティク構造を与えることができた。この構造を平坦接続のモジュライに簡約するモーメント写像について研究を続けている。
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