研究概要 |
本年度は以下の研究を行った。 宇宙初期に存在するダストの種類、量、サイズを明らかにするために、宇宙初期のダスト形成場所である重力崩壊型およびpair instability型超新星爆発時に放出されたガス中で形成されるダストの種類、サイズ、サイズ分布の前駆星の質量依存性をより現実的なejectaの温度の時間変化を用いて一連の計算をおこない調べた。具体的には、前駆星の質量が、13,20,25,30Moの重力崩壊型4例と、170、200M_<【of sun】>のpair instability型2例のそれぞれに対して、ejectaのガスの温度の時間変化を放射性元素の崩壊にともなう加熱を考慮した輻射輸送計算により求め、元素混合が無い場合と完全に混合している場合に対して形成されるダストの種類、形成量、サイズ、およびサイズ分布を明らかにした。得られた計算結果は以下である。 ・前駆星の質量に関わらず爆発後1年〜2年でダストが形成される。 ・形成されるダストの総質量は、重力崩壊型では前駆星の質量の2〜5%、pair instability型では20〜30%程度になる。 形成されるダストの種類やサイズは前駆星の質量にはあまり依存せず、 ・元素の混合が無い場合には、ejecta中での形成場所の元素組成の違いを反映して様々なダストが形成されるが、完全に混合がおこっている場合には酸化物のダストが形成されるだけである。 ・形成されるダストの半径は1μmを越えない。 ・形成された個々のダスト種のサイズ分布は、形成場所の広がりに応じて、ガウス分布または巾乗分布になる。 ・形成された全ダスト種を足上げたサイズ分布は、ダストの半径が〜0.03μm程度より大きい場合には巾指数が-3.5の、それ以下では巾指数が-2.5の巾乗分布で近似される。 以上の研究成果は、天文学会や関連する研究会で発表された。得られた計算結果に基づく宇宙初期の星間空間でのダストの進化モデルの構築は、現在進行中である。
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