本年度は昨年度に構築した銀河のスペクトル進化・種族合成モデルを更に発展させ、銀河の化学進化と星の生成史とをカップリングしたモデルを開発した。これによって、単一の星の種族よりなる銀河のみならず、星生成が連続的に行われた(より現実的な)銀河についても、非常に波長分解能の高いスペクトル進化を予測するモデルを構築できたと言えよう。特筆すべきことは、念願のすばる望遠鏡(口径8.2m)の公募観測に二夜採択(H14年4月)されたことである。また、欧州南天文台(ESO)のNTT望遠鏡・(口径3.6m)でも三夜採択(H14年5月)され、それぞれ7個と5個の楕円銀河の分光撮影に成功し、非常にSN比の高いHγ(σ)吸収線のプロフィールを得ることができた。これを本研究で構築した銀河スペクトルのモデルを用いて解析すると、年齢と金属量とを導出することができる。このモデルは年齢と金属量の縮退を初めて解いたモデルであり、楕円銀河の年齢を正確に求めたのは本研究が世界で初めてである。楕円銀河のサンプリングは色一等級関係に沿って明るいもとから暗いものまでを抽出し、銀河団にあるものとフィールドにあるものとを比較のために選んだ。これに昨年度までにWHT望遠鏡。(口径4.2m)で分光した楕円銀河のサンプルを加え、楕円銀河はその明るさ(質量)によって年齢が異なることを見出した。即ち、質量の大きな楕円銀河については年齢が古い(約100億年以上)のに対して、矮小楕円銀河では年齢に大きな分散(50億年-100億年以上)があることを発見した。この矮小楕円銀河の年齢の結果は、これまで有本等によって楕円銀河の形成理論として提唱されていた銀河風理論でも、また近年宇宙の大規模構造をよく説明する。とされる階層的合体理論でも単純には説明できるものではなく、今後はこの結果を説明するような理論・シナリオを構築することが本研究の主要な目的となる。
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