2001年春に、おとめ座銀河団の中心近くの1視野を、すばる望遠鏡に主焦点広視野カメラSuprime-Camをつけて観測を行った。広帯域はVバンド(15分露出)とRバンド(12分露出)で、また惑星状星雲検出の鍵となる狭帯域は、酸素輝線(O[III]5007Å)を含むバンド(60分露出)と水素輝線(Hα6563Å)を含むバンド(145分露出)で撮像した。本研究で得られた成果は以下の諸点にまとめられる。 今回のように酸素と水素の二本の輝線を使った観測は誰も行ったことがないため、まず、どのような基準で選択すれば惑星状星雲が間違いなく検出できるかを検討し、その基準を確定した。惑星状星雲は、([OIII]-Hα)versus([OIII]-(V+R))、の二色図を使って検出できることを示した。 この新たな基準によって、銀河団中心近くの観測視野(約27分×24分)内に、38個の確実な惑星状星雲の候補を発見した。これらの候補の空間分布は極めて非一様で、M86-M84の二つの銀河からなる集団に付随しているように見える。この視野内で、銀河の全光度と銀河間空間に広がっている淡い光の総量の比は約10%、ダークマターを含む全物質に対するバリオンの比は約20%と推定された。 予想もしなかったことだが、NGC4388から極めて離れた位置にある、コンパクトな星形成領域(HII領域)を発見した。このHII領域は僅か2-3個のOB型星によって電離されている小さなものである。銀河からこれほど離れたところで星生成が起こっている現場を捕らえたのは初めてであり、銀河形成過程の解明に重要な意味を持つ発見と考えられる。 これも予想しなかった副産物であるが、深いHα画像において、セイファート銀河NGC4388の周りに約35kpcにもわたって広がる巨大な電離水素ガス雲が発見された。この種の電離ガス雲としては最大規模のものである。
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