1.潮汐力を受けた恒星の振動例として、δScuti型脈動変光星であるθTucの脈動を研究した。同定された13の振動数の内の1つは連星周期(約7日)に対応している。伴星の質量はθTucのおよそ1/10に過ぎない。脈動星として考えてみた場合、1/10の質量の伴星によって振動が励起される事は通常はありえない。そこで、連星の公転周期がたまたまθTucの四重極重力波固有モードの周期と一致し、共鳴振動を引き起こしているのだとする解釈を提唱した。この考えでは、星は動的潮汐のためにもはや球対称から外れた形となっており、そのことがδScuti型動径脈動に影響を及ぼすことになる。自転軸が公転面に対して傾いているとすると、自転している星から見ると、変形長軸が7日で回転する。このために、動径脈動の固有関数は長軸を極とする四重極成分を持つようになり、それがために振動数が微細5重項となり、観測を説明する。 2.新たに、θTucの脈動に於ける色指数の軌道の位相による変動を解析し、軌道周期の変動成分が、星が潮汐力により楕円球状の変形をしていることによることを明らかにした。また、軌道周期に対して1:72の共鳴関係にある脈動成分を検出し、潮汐力を受けて非動径振動が起きていることを検証した。 3.分光連星系の一つである、Procyonの主星Procyon A(以下では単にProcyonと記す)の振動の検出を目的として2002年12月に国際ネットワーク観測キャンペーンに参加し、米テキサス州McDonald天文台にて観測を行なった。 データ解析はi)CCDの2次元データからのスペクトルの導出、ii)スペクトルからの視線速度の見積もり、iii)視線速度の時間変化の周期解析、の順に進める予定で、現在、作業中の段階である。
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